東京オリンピックレガシーの提案:ナビゲーション・インフラストラクチャー
08.1.2016
Hisayuki Araki in 2016 olympics, Design in Asia, Planning & Urban Design, Urban Planning, sports

Image courtesy of Flickr user Shuets Udono

2020年のオリンピック開催都市として選出された東京では各種の施設やインフラの設備などがすでに始まっています。オリンピック開催を機に「長期にわたる、特にポジティブな影響」は「オリンピック・レガシー」と呼ばれ、社会において持続的な効果を与えます。1964年の東京オリンピックでは、首都高速道路の整備や東海道新幹線などがレガシーとして上げられます。ゲンスラー東京では、2014年より2020年開催の東京オリンピックに向けたオリンピック・レガシー構築の為のプロジェクトを開始しました。アイデア立案にあたり、「東京都の将来戦略」、「過去のオリンピックレガシー」、そして「東京の都市機能における問題点」の調査を行いました。

東京都ではさらなる進化を目指した都市戦略「2020年の東京」が策定され、戦略の一部では「多言語対応の推進」による言葉のバリアフリーの実現を掲げています。2020年までに訪日外国人数の更なる増加は予想されており、多言語表示の道路標識のガイドラインの策定などが行われています。またその他の戦略の一部として「防災都市の実現」も掲げており、防災に関する意識向上と総合的な防災施策を計画されていることを確認しました。

過去のオリンピックレガシーの調査では、都市型インフラを残した1964年の東京オリンピック、初の商業五輪であった1984年のロサンゼルスオリンピック、サステナビリティを掲げた2012年のロンドンオリンピックなど、オリンピック後もレガシーとして社会に影響を与えた事例を確認しました。

東京の都市機能における問題点の調査を、訪日経験がある外国人を対象にアンケート方式で行いました。対象者の80%が案内標識に不満を持ち、60%が目的地検索や案内を標識に頼らず、スマートフォンやタブレット端末で行っていました。案内標識の多言語化や可読性の向上が求められていることを把握しました。

以上3調査の結果から、オリンピック後にも活用可能なシステムとして「ナビゲーション・インフラストラクチャー」というコンセプトの立案に至りました。このシステムは都市基盤である既存のインフラに情報を掲載し利用者に提供します。また自然災害の際の対応ライフラインとして活用されます。言葉のバリアフリーと防災都市東京の実現をサポートするナビゲーション・インフラストラクチャーは5段階のスケールで包括的に展開され、それぞれがシームレスに連動しています。

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(XS)パーソナルスケール:スマートフォンを活用したリアルタイムナビゲーション :

スマートフォンにダウンロードできるナビゲーションアプリは、AR(拡張現実)により道路標識の多言語化を可能にし、言語問題を解決します。ナビゲーション以外にも、地域情報や災害情報などをわかりやすいグラフィカルユーザーインターフェースを通して提供します。

(S) ストリートスケール:自動販売機を活用した道案内と災害対策

デジタルディスプレイが搭載されている自動販売機は、オリンピックや地域情報の提供に活用されます。非常用具が自動販売機内に備蓄され、災害時には飲料供給も行います。日本全国には自動販売機が550万機設置されており、日本国民に3日分の飲料供給が可能とされています。

(M)メインロードスケール:コミュニケーションハブとしてのバス停

バス停では無料のWi-Fiを提供し、搭載されたデジタルディスプレイを通してオリンピックゲームを放送します。また、ディスプレイはタッチスクリーンなので、使用者個人が求めている情報を提供します。スマートフォンアプリと連動し、道案内提供も可能です。災害時には避難経路を提示します。

(L)ディストリクトスケール :ビルやコンビニエンスストアの壁面に融合されたデジタルディスプレイ

主要なビルやコンビニエンスストアの壁面にデジタルディスプレイを融合させ、天気や交通情報を提供します。バス停と同じく、スマートフォンアプリとの連動も可能です。全国約5万2千店舗存在し、東京の街角に必ずあるコンビニエンスストアの店舗壁面を活用すると、このナビゲーションシステムはさらに強固になると考えます。

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(XL)シティスケール:主要交差点大型ビジョン活用

東京の主要エリアに存在する大型ビジョンを通して情報提供を行います。オリンピック時にはパブリックビューイングの場所となりますが、災害時には避難経路の提示と災害用伝言板など、コミュニケーションのツールとして最大限に活用されます。

すべての情報は統一感のあるグラフィックを使用し、多言語で表示されます。オリンピック時のゲーム情報、会場までの道案内などを中心に、そしてオリンピック後はコミュニティー情報、観光地の道案内などの情報提供をします。緊急災害時には全てのスケールにおいて災害情報を提供します。ナビゲーションシステムを既存のインフラに掲載することで新たなる価値を都市に加え、利用者にとっても快適な都市の経験が可能になります。

現在、ゲンスラー東京では実証実験などを通し、2020年までに実現化したいと考えています。「ナビゲーション・インフラストラクチャー」の実現化の為、ご協力頂ける企業や団体を探しています。ご興味のある方は info-tk@gensler.com までご連絡願います。

荒木 久幸 米国と日本において、建築およびインテリアデザインプロジェクトのマネージメント業務を幅広く経験。 バイリンガルであるだけではなく、日米両国の文化やプロジェクトプロセスを熟知している事から、様々なクライアントのニーズに応える事ができる。 また、新しいテクノロジーを駆使してデザインプロセスの最適化を追求すると同時に、強い責任感でリーダーシップを発揮し、プロジェクトチームを率いている。 .
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